○1.先日「プロ法律家のクレーマー対応術」(横山雅文・著、PHP新書)を読みました。
第1版第1刷が、2008年5月ですから少し前の本ですが、大変参考になりましたのでご紹介します。
本書では
クレーマーに遭遇したときの、その見分け方、弁護士との連携、従業員の保護など、具体的な対策を詳説しています。
著者も述べているように
お客様のクレームに対しては、真摯に耳を傾け、お客様が満足するまで誠意をもって対応する、
クレームはお客様からの重要なご指摘であり、企業の財産である・・・
という建前が長らく当然の前提とされていました。
あくまでも基本的なスタンスは上記のようなものですが、この立場をかたくなに固守すると、問題が悪戯に長期化し、担当者が精神的に疲弊するなど大変なことになると著者は指摘しています。
○2.ポイントは、次の2点です。
(1)苦情を言ってこられるお客様の中で、本当のお客様と「悪質なクレーマー」を見分けること。
(2)悪質なクレーマーに対しては、法的対応を取るべきこと。
顧客の中で、本当のお客様と悪質なクレーマーを見分けることはそう簡単ではありません。
詳しくは本書をお読みいただくとして、
著者は悪質クレーマーに4つの類型があることを指摘しています。
それぞれの類型の特徴を記述し、各類型への対応の基本を述べ、さらに悪質クレーマーとして法的対応を取るべき段階を具体的に指摘します。
また著者は、普通の顧客を悪質クレーマーに変貌させるような企業側の対応もあるとして注意を促します。
著者は悪質クレーマーに対する交渉において経験豊富な弁護士であるので具体的な指摘がなるほどと納得のいくものです。
〇3.著者は弁護士であるので法的対応にも比較的詳しく言及しています。
交渉の途中で何がしかの文書(念書など)は絶対に書いてはいけないと指摘します。
書面審理主義のわが国裁判においては、念書などは決定的な証拠になると指摘しています。
また書いてしまった場合には弁護士名で即刻撤回の意思表示を行なうべしとしています。
悪質クレーマーとの交渉において注意すべき点や、法律的アドバイス、犯罪者の心理など多方面に亘り参考になることの多い書籍です。
著者は、苦情対応の最初は
感情的な物言いをしてくる相手に対し、決して感情的にならず、冷静に淡々と事実関係の確認をすることが大切だと説きます。
そしてお詫びをする(決して責任を認めるような謝罪ではない)。
あくまでも「お手数(ご迷惑)をおかけしまして申し訳ございません」等というもの。
決して「当方の過失でした」とか「当方の責任です」などと言ってはならないと戒めます。
注意すべきは、責任の有無の判断や損害賠償額の提示そのものや、それらを前提とした行為、例えば損害額の査定などをしてはならないと言います。
また相手から見積書が出されても決して受け取ってはならないと言います。
なぜならその金額がその後の損害額の交渉の基準になってしまうからです。
それこそ彼らの術中に嵌ってしまう状況です。
私も過去にいくつかのトラブル対応をしましたがこの本を読んでいて冷や汗が出ました。
多くの学ぶべきことがあり、今後のトラブル対応に活かさねばならないと切に感じました。
今回もお読みいただき誠にありがとうございました。
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○【次号予告】 次回12月号のテーマは「一年を振り返って」です。