「CASE」車業界の今後

車好きの情報発信 vol.20

パステルの森下です。vol.19で記載したe-fuel(合成燃料)について、もう少し詳しく記載します。

e-fuelとは、合成燃料の一つです。では、合成燃料とは何かということですが、「人工的な原油」とも呼ばれており、二酸化炭素と水素を使って製造する燃料です。その中でも化石燃料に由来しない水素を用いたものを「e-fuel」と呼んでいます。ただし、EUの定義は、さらに条件が厳しく「大気中から回収した二酸化炭素と水素で作ったもの」と決定しています。vol.19で記載しているe-fuelは、この定義にあてはまります。大きな違いは、二酸化炭素の回収を大気中からと限定していることです。大気中以外から回収した二酸化炭素(例えば火力発電所などで発生するもの)は、元々大気中に存在しなかった二酸化炭素です。その二酸化炭素を回収しても、発生させた場所(例えば火力発電所)のカーボンニュートラルになるだけです。大気中の二酸化炭素から合成燃料を作り、その合成燃料を燃焼させて発生した二酸化炭素が大気中に排出されることで、カーボンニュートラル(二酸化炭素が増えない)が実現する、ということです。

この循環は、理想的に思いますが、大きな問題があります。そもそも大気中の二酸化炭素濃度は0.04%くらいしかありません。これは、50mプール分の大気中に6リッター(12g)しか含まれていないことになります。12gでは、計算上、20km/Lの燃費のエンジン車が約125mしか走行できません。この数字だけでも実用化には、コスト、生産量に問題があることがわかると思います。しかも、大気中から二酸化炭素を回収するのも、大気から水素を作るのも、二酸化炭素と水素を合成するのも、電気エネルギーが必要です。これらの電気を再生可能エネルギーで賄わないと カーボンニュートラルにはなりません。問題が多すぎて、とても現実的には思えませんが、EUの自動車は、この燃料かEV(電気自動車)かの2択で進んでいくことになります。

尚、日本でも合成燃料の実用化に向けて技術開発が行われています。EUのe-fuelとは二酸化炭素の回収条件が異なりますが、目標は、2050年までに200円/Lとのことです。